第1回 喉頭がんについて

 喉頭全摘は喉頭癌に対する最終的選択としての手術です。最近では、いずれテーマとして取り上げたい下咽頭癌 治療のために咽頭・喉頭・食道摘出術(いわゆる咽喉食摘)が広く行なわれるようになり、喉頭癌に限らず喉頭全摘が適用されることがあるわけですが、まずは喉頭癌の疫学(えきがく:疫というのはもともと伝染病をさすことばで、そのことから病気の起こり方、あらわれ方を主として統計学的に調べる学問領域を疫学というようになりました)について述べることにします。なお、この項については、大阪府立成人病センター耳鼻咽喉科の吉野邦俊先生の論文(喉頭癌の疫学・臨床統計.JOHNS 18:723-734, 2002)を専ら参考にさせて頂きました。

  わが国における喉頭癌の頻度は、大体年間3,000例弱というところです。男女比はほぼ9対1くらいで、人口10万人に対する発症率(罹患率)は男性で3.9(人)、女性で0.4程度です。一方、世界的にみると喉頭癌はラテン系(南欧、南米)に多く、例えばスペインでは男性の場合日本の5倍以上の罹患率です。逆に北欧ではその率が低いことが報告されています。癌の発症には社会の高齢化が関係しており、わが国については2015年の喉頭癌患者数が4,600人に達するという予測もあります。

  喉頭癌の発生には喫煙の影響が非常に大きいと考えられており、死因の面からみた統計では喉頭癌の死因に喫煙がどの程度関係するかという"寄与危険度"で、96%と、すべての癌の中で最も高いとされています。この点は今後の国民衛生を考える上で重要な問題といえるでしょう。また声帯より上方に生じる喉頭癌ではアルコールの影響も大きいとされており、スペインではこのタイプの癌が最も多いことが知られています。

  喉頭癌の治療は癌の発生部位、発見の時期や癌の拡がりの程度、癌細胞の性質などによって決められていきますが、初期のものでは放射線療法、抗癌剤療法、レーザー治療(レーザー光線による組織の焼灼)、喉頭の部分切除などを単独あるいは組み合わせて行なうのが通例です。しかし、いわゆる進行癌では喉頭全摘が選択されることが少なくなく、全体の症例の1/10以上がその対象となると考えられます。

  今回は第1回として、まず喉頭癌というものについて述べてみました。

Last Update : 2003/07/15